
こんにちは!工場・製造業求人サイト「イカイジョブ」の編集部です。
変形労働時間制は、繁忙期や閑散期に合わせて法定労働時間内で勤務時間を柔軟に調整する制度のことですが、調べてみると「変形労働時間制はきつい」という意見が少なからず見られます。
求人情報でもよく見られる変形労働時間制ですが、実際どのような働き方で労働時間の長さや残業時間の扱い、休日の日数などわかりにくい部分が多い働き方ですよね。
この記事では、変形労働時間制の仕組みやきついと言われる理由、メリット・デメリットなどわかりやすく解説していますので仕事探しの参考や疑問の解消に繋がれば幸いです。
また、記事の後半では変形労働時間制でよくある疑問をQ&A形式でまとめてありますので、あわせて参考にしてみてください。
変形労働時間制とはどんな働き方?
変形労働時間制は、繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに、閑散期の所定労働時間を短くするというように、業務量に合わせて1日の労働時間を調整できる制度のことです。
労働基準法では、法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えて働かせてはいけないと規定されていますが、変形労働時間制では業務量の増減に合わせて労働時間を調整し、一定期間を平均した1週間の労働時間が40時間以下になるようにしています。
変形労働時間制を採用するためには、企業側と労働者の合意を必要とする労使協定を労働基準監督署に提出する必要があります。

変形労働時間制の種類
変形労働時間制の対象期間には1週間単位・1ヶ月単位・1年単位の3つの単位があり、特定の期間や季節など業務の繁忙期に合わせて1ヵ月単位又は1年単位のいずれかが選択されます。
対象期間が1週間単位の場合は、日ごとの業務量が大きく変動することが多く、労働時間を特定することが難しい事業に特定されており、労働者30人未満の小売業、旅館、料理店、飲食店と規定されています。
1年単位の 変形労働時間制 | 1ヶ月単位の 変形労働時間制 | 1週間単位の 変形労働時間制 | |
業種制限 | 制限なし | 制限なし | 労働者30人未満の小売業 旅館・料理店・飲食店 |
休日数と連続勤務の 制限 | 週1日 | 週1日または 4週4日の休日 | 週1日または 4週4日の休日 |
1日の労働時間上限 | 10時間 | 制限なし | 10時間 |
週の労働時間上限 | 52時間 | 制限なし | 制限なし |
週平均労働時間 | 40時間 | 40時間 (特例:44時間) | 40時間 |
変形労働時間についての 労使協定の締結 | 必須 | 必須 | 必須 |
労働基準監督署への届け出 | 必須 | 必須 | 必須 |
就業規則の届け出 | 必須 | 必須 | 必須 |

なお、変形労働時間制で働く場合には残業手当(時間外手当)の計算方法が通常とは異なる点に注意が必要です。
例えば、1ヶ月単位の変形労働時間制の職場で
・月曜・金曜/所定労働時間 10時間
・火曜・水曜・木曜/所定労働時間6時間 週合計38時間 とされていた場合、
時間外手当は、週40時間(法定労働時間)を超えた場合に発生するため、月曜・金曜にそれぞれ11時間ずつ労働したとしても、残業手当(時間外手当)は発生しません。
「残業したのに手当てが支給されない」という思い込みにならないよう注意が必要です。
ここからは、変形労働時間制のそれぞれの対象期間について解説していきます。
1年単位の変形労働時間制
1年単位の変形労働時間制は、1ヶ月を超えて1年以内の一定期間で平均して1週間の労働時間が40時間以内になるように調整する制度です。1年以内であれば3ヶ月・4ヶ月・6ヶ月を対象期間にすることも可能で、季節や時期によって繁閑がある製造業、建設業、運輸業などに多く採用されています。
比較的柔軟に調整ができる1ヶ月単位の変形労働時間制とは違い、1日・1週間の労働時間に上限が設けられているほか、連続勤務についても繁忙期で12日、通常6日までと定められています。
うるう年以外の場合 | 週40時間×365日/7日 → おおよそ2,085時間 |
うるう年の場合 | 週40時間×366日/7日 → おおよそ2,091時間 |
1ヶ月単位の変形労働時間制
1ヶ月単位の変形労働時間制は、1ヶ月以内の期間を平均して1週間当たりの労働時間が40時間(特例措置対象事業所※は44時間)以内になるように調整する制度です。一ヶ月間の総労働時間数は、月により労働日数が異なるため次のようになります。
月の日数 | 1ヶ月の上限労働時間 |
31日 | 177.1時間 |
30日 | 171.4時間 |
29日 | 165.7時間 |
28日 | 160時間 |
※特例措置対象事業所・・・常時使用する労働者数が10人未満の商業、映画、演劇業(映画の制作の事業を除く)、保健衛生業、接客娯楽業のことを指します
※参照:厚労省/令和4年就労条件総合調査 結果の概況/**第8表 変形労働時間制の有無、種類別採用企業割合
1ヶ月単位の変形労働時間制を採用する企業は全体の26.6%で小売業や飲食、美容業や宿泊業などのサービス業種が多い傾向があります。
1週間単位の変形労働時間制
1週間単位の変形労働時間制は、常時労働者が30人未満の小売業、旅館、料理・飲食店に限定して採用できる制度で、「1週間単位の非定型的変形労働時間制」とも言います。
日ごとに繁閑が発生することが多く、限られた従業員で対応するため1週間単位で労働時間を柔軟に調整できるようにした制度です。
勤務シフトの変動による従業員の負担を軽減するため、企業側は1日10時間、週40時間を上限に、各日・各従業員の労働時間を定めて、少なくとも1週間前には従業員にシフトを通知することが義務づけられています。
変形労働時間制がきついと言われる理由
変形労働時間制は、業務量に合わせて労働時間を調整することで、全体としての労働時間を短縮させることを目的に導入されているにも関わらず「きつい」と言われるのはなぜなのでしょうか?
ここからはその要因を解説しますので、自分に合うかどうかを判断していきましょう。

繁忙期の労働時間が長くなる
変形労働時間制は、繁忙期の所定労働時間を長くする代わりに閑散期の所定労働時間を短くする調整が行われます。
繁忙期の労働時間は基準の8時間を超える場合が多く
・疲労の蓄積により体力的にきつい
・集中力を保つのに精神的にきつい
・長時間勤務により生活のリズムが崩れる
といったストレスを感じる人が多いようです。
また、繁忙により変形労働時間制を導入しても1日の労働時間が所定労働時間(定時)に収まらない場合には、「三六協定※」を適用した時間外労働(残業)が発生したり、休日出勤が発生したりする場合があります。
長時間労働による集中力の低下や睡眠不足は思わぬ事故や病気を招く危険性もありますので、休憩時間に仮眠を取ったりストレッチでリフレッシュするなど気分転換を心がけましょう。
※「三六協定とは」・・・労使合意の元労働基準監督署に届け出ることで、労働時間の延長や休日労働が可能になります。通常は1ヶ月45時間、1年360時間を超える労働は認められません。
交替勤務との組み合わせで生活リズムが崩れやすい

変形労働時間制は労働時間を柔軟に調整できることから交替勤務の職場でも広く採用されています。
交替勤務の職場では、労働時間が長くなることに加え、2交替や3交替など勤務時間が変動することで身体や精神的な負担が増えてきついと感じる人がいるようです。
特に繁忙期と閑散期が切り替わる時期には生活リズムが崩れやすく、睡眠不足や体調不良の原因となる場合があります。
その反面、深夜労働時間の増加や時間外労働(残業)により高収入が期待できます。体力に自信のある人や交替勤務に抵抗がない人にとって繁忙期は稼げるチャンスでもあります。
変形労働時間制が適正に運用されている企業であれば、繁閑期は事前に把握できますし、残業もある程度は事前予測することができます。
面接や職場見学の際に、現在の繁閑状況についてヒアリングしてみるのもよいでしょう。
労働基準法を守っていない場合がある
変形労働時間制は、労働時間の柔軟な調整を可能にする制度です。しかし、一部の企業ではこの制度を正しく適用していない場合があります。面接や職場見学の際には、以下の点について確認するように心がけましょう。
・変形労働時間制の適用有無の確認
求人情報の中には、変形労働時間制であることが記載されていない場合があります。その場合、繁忙期と閑散期の労働時間の変動についても記載されていません。
特に季節により繁閑が想定される業種や職場については、変形労働時間制の適用の有無について確認するようにしましょう。
・総労働時間の確認
変形労働時間制には適用期間に応じて総労働時間の計算方法があることは前述しました。変形労働時間制に関して労働基準監督署に届け出はしているものの、誤用や悪用している場合もありますので注意しましょう。
適正に運用されている企業であれば就業規則や労使協定に関して書面で説明してもらえるはずですので、労働時間や時間外手当の有無など不安な箇所があれば積極的に質問するようにしましょう。
変形労働時間制のメリット
さまざまな業種で採用されている変形労働時間制は、働く側にはどんなメリットがあるのでしょうか?ここでは従業員側のメリットについて詳しく解説していきます。
業務効率が向上することで残業時間が少なくなる
変形労働時間制では、閑散期には労働時間を短縮できるため、不必要な労働時間がなくなり業務効率を改善することができます。
繁忙期においても労働時間が明確になることで生活のリズムが整えやすくなり、1週間又は1ヶ月当たりの総労働時間も抑えられるため、残業時間が低減できて身体への負担も最小限に抑えることができると言えるでしょう。
企業側も変形労働時間制を導入することで労働時間の管理がしやすくなるため、急な残業や休日出勤が減ることで従業員のストレスも軽減されます。
メリハリのある働き方ができる
繁忙期の一定期間に集中して働くということは、閑散期に労働時間を短縮したり、休んだりできるということです。このように変形労働時間制では、仕事のペースにメリハリがつきやすく効率的に仕事を進めることが可能です。
閑散期に計画的に休暇を取得したり、キャリアアップ・スキルアップの時間に充てることもできるため、仕事に対するモチベーションを保つことができます。また、家族や友人とのコミュニケーションや自分の休息に充てることで、ストレス解消や生活満足度の向上にも繋がります。

変形労働時間制のデメリット
変形労働時間制のメリットを理解したところで、ここからはデメリットについて解説していきます。
8時間を超えても残業代が発生しない
所定労働時間が8時間以上に設定される繁忙期では、残業代が発生しない場合があります。
以下に具体例を挙げて解説します。
▼繁忙期の所定労働時間と実労働時間
所定労働時間 | 実労働時間 | 時間外労働時間 | 残業代 | |
月 | 10時間 | 11時間 | 1時間 | 1時間 |
火 | 10時間 | 12時間 | 2時間 | 2時間 |
水 | 10時間 | 10時間 | 0 | 0 |
木 | 5時間 | 5時間 | 0 | 0 |
金 | 5時間 | 6時間 | 1時間 | 0 |
週合計 | 40時間 | 44時間 | 4時間 | 3時間 |
・月曜日/所定労働時間を上回る1時間が時間外労働で残業代が発生します
・火曜日/所定労働時間を上回る2時間が時間外労働で残業代が発生します
・水曜日/法定労働時間8時間を上回っていますが、所定労働時間内のため残業代は発生しません
・木曜日/所定労働時間内かつ法定労働時間内のため残業代は発生しません
・金曜日/所定労働時間を1時間上回っていますが、法定労働時間内のため残業代は発生しません
このように、変形労働時間制の時間外労働は通常とは異なり、所定労働時間を上回る時間全てに残業代が発生するとは限りませんので覚えておきましょう。
時給制や日給制で働くと閑散期の給料が減ってしまう
時給制・日給制の仕事は、繁忙期には労働時間の延長や残業の増加により給料が増えますが、閑散期には労働時間が減少し休日が多くなるため給料が減ってしまいます。
そのため、家賃ほか毎月決まった支出がある人や、自分の希望給与額がある人は注意が必要です。
応募時や面接時に変形労働時間の詳細や繁閑期の労働時間の違いを確認し、収入の安定を図る対策をしておきましょう。
変形労働時間制Q&A
ここからはイカイジョブ採用センターの協力のもと、勤務時間や変形労働時間制についてよくある質問をQ&A方式でまとめてみました。
自分が応募を検討している仕事に変形労働時間制が適用されている場合や現在勤務しているけど変形労働時間についてよくわかっていない、と言う人はぜひ参考にして理解を深めてください。
変形労働時間制の休憩時間はどうなる?
労働基準法での休憩時間は、以下のように定められています。
勤務時間 | 必要な休憩時間 |
6時間〜8時間以内 | 45分以上 |
8時間以上 | 60分以上 |
これは変形労働時間制を採用している職場もそうでない職場も同じです。
変形労働時間制の繁忙期に所定労働時間が10時間を超える場合もあるため、企業によっては10分休憩を追加したり仮眠時間を考えた休憩時間を設定するなど、従業員の安全とリフレッシュを図ることがあります。
イカイジョブに掲載中の求人で見てみると、就業時間が12時間と長いものの、休憩時間を140分設定したり3日勤務して3日お休みを取得する3勤3休制を導入しています。
変形労働時間制で働ける1日の労働時間の上限は?
変形労働時間制は、労働時間の調整をすることで従業員の働き過ぎを防ぎ、ワークライフバランスを確立することを目的としています。
そのため、適用期間に関係なく週平均あるいは1週間の労働時間が40時間以下であることを基準として、1日あたりの労働時間上限が設けられています。
変形労働時間の適用期間 | 1日の労働上限時間 |
1年 | 1日10時間 |
1ヶ月 | 上限なし |
1週間 | 1日10時間 |
変形労働時間制の休日は少ない?
労働時間が長くなる繁忙期では休日数は増え、短くなる閑散期では休日数は少なくなります。
変形労働時間の適用期間によりますが基本的には週40時間が所定労働時間になるため、1日の労働時間が長ければその分所定休日または法定休日を設定して労働時間の調整をする必要があるからです。
先ほど変形労働時間の休憩時間で例に挙げた求人も3勤3休を導入しています。
変形労働時間の残業はどこから?
変形労働時間制のメリット欄でも解説したとおり、変形労働時間制の残業は所定労働時間を超えた全ての時間に適用されるわけではありません。
前述を簡潔にまとめると、変形労働時間制の残業は
- 所定労働時間が8時間以上の場合は、所定労働時間を超えた時間から適用
- 所定労働時間が8時間未満の場合は、法定労働時間8時間を超えた時間から適用
となります。
その他、変形労働時間制の適用期間および週や月単位の所定労働時間によっても異なってきます。
変形労働時間制の残業は相殺できる?
変形労働時間制では残業と所定労働時間を相殺することはできません。
例えば、時間外労働をした2時間を翌日の8時間の所定労働時間から2時間差し引いて6時間勤務にする、といったことは認められていません。
時間外労働は時間外割増賃金がつきますので、通常賃金の所定労働時間と相殺することは法律違反となります。
1年単位の変形労働時間制の総労働時間は?
1年単位の変形労働時間制は、1年単位だけでなく3ヶ月・4ヶ月・半年など適用期間を自由に設定することが可能です。
適用期間による総労働時間は以下となっています。
対象期間 | 総労働時間の上限 |
1年間(365日の場合) | 2,085.71時間 |
6ヶ月(183日の場合) | 1,045.71時間 |
4ヶ月(122日の場合) | 697.14時間 |
3ヶ月(92日の場合) | 525.71時間 |
変形労働時間制の対象期間中のシフト変更はできる?
変形労働時間制は、従業員の健康管理や労働時間のバランスを考慮して計画的に調整することを前提としているため、対象期間中のシフト変更は基本的に認められていません。
ただし、例外として労使協定の締結、自然災害や事故などの不可抗力、業務上の緊急対応、個別の従業員の事情でシフト変更が認められる場合があります。
変形労働時間制とフレックスタイム制との違いは?

変形労働時間制が一定の期間全体で労働時間が計画され、スケジュールが固定されているのに対して、フレックスタイム制は日々の労働時間を従業員が柔軟に調整できる制度です。
フレックスタイム制では一般的に「コアタイム」と呼ばれる必ず働かなければならない時間と「フレキシブルタイム」と呼ばれる時間帯が設定されています。
従業員はフレキシブルタイム内で日々の始業・終業時間を自由に決めることができますが、労働基準法にある1日8時間を基準にする点や1ヶ月の総労働時間を法定労働時間内に抑える必要があり、勤務時間に対する管理能力が必要になる制度です。
まとめ
今回は変形労働時間制について詳しく解説しました。
業務の繁閑に合わせて勤務時間を調整する仕組みは効率的な働き方とも言えますが、向き不向きもありますのでメリットとデメリットをしっかりと把握した上で就職・転職を検討する必要があります。
また三六協定など労働に関する法律はさまざまで完璧に理解するには時間がかかります。
特に初めて変形労働時間制を採用している仕事に応募する際には、応募時の問い合わせや面談時に質問するなど、自分の希望する働き方に合っているかを確認するようにしましょう。
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